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2013年4月24日 (水)

債務の本旨:趣旨、目的

               債務の本旨:趣旨、目的

 

 債務とは他人に対して一定の給付をなすべき義務である。例えば、売買では物の引渡が売主の債務、代金支払が買主の債務である。日本のように社会が成熟した国ではあまり問題が起こらないが後進国ほど問題が多いようである。債務の履行はその人間の社会の成熟度を知る尺度になろう。

 日本製の中古自転車を1800ペソ約3600円で買った。某県の登録が貼られている。ブレーキ、タイヤバランスをチェックしたのだが、すぐ空気が抜ける、パンクする。すぐ店に持って行って修理させた。当然と思われるのだろうがフィリピンでは当然ではないのだ。「貴方はこの自転車を買った。私はこれを引渡した。故に私の債務は消滅した」というのだ。

 ここで債務の本旨が問題になる。本旨とは目的である。自転車は飾っておくものではない、乗り物である、タイヤが正常に機能しなければ自転車の効用はない。これは債務不履行である。故に修理する義務がある。貴方はこの自転車の機能を熟知して買った。だから買ったあとは貴方の責任である。

 修理するか否かを尋ねている、返答次第では契約を解除して損害賠償を請求する。すぐ修理します。なら結構、これから買物にゆくから30分以内に修理して引渡しなさい。わかりました、で一件落着。ただし、パンク修理に足を運ぶこと三度、時間労力不快等に対する賠償はなし(それ以上やるとここでは身が危ういのである)。

 売り物なら乗れる状態で引き渡せと怒鳴りつけたいのを堪える。ここの商売は在庫が捌けたらお終いである。次は入荷あった時、それも何時のことやら。継続反復は稀である。売買の原点を見た感じだ。このニュースは近所に知れ渡る。あの日本人ならバランガイ(区役所、かっての部族を単位とする最小行政単位)どころか裁判所に訴えかねないぞ。私もあの店で自転車買ったから修理してもらおう。などと噂になっているらしい。

 

 さて、債務の本旨とは契約の内容、法律の規定、取引の慣行、信義則などに照らして当然に期待されることである。これを果たさないと債務不履行となる。債権者には強制執行、損害賠償請求、契約解除等を選択することができる。問題は期待である。この判断が難しい。

 上記の自転車は欠陥車である。花嫁衣裳が式の日までに届かなかった、というのも債務の本旨に従った履行」をしなかったから不履行である。遠い昔の事なので正確には思い出せないが印象に残る事件がある。

 子供を隣人に預けて外出した両親がその隣人を名古屋地裁に訴えた事件である。子供が隣人宅の池で溺れて死んだのである。隣の子供預かった以上隣人には子供の生命の安全を守ることが期待されている。それは有償無償を問わない。隣人は期待に応えなかったから債務不履行である。強制執行も契約解除も無意味であるから原告両親には損害賠償請求しか無い。

 この事件は理論的には提訴してもおかしくない。しかし国民感情からすれば、この両親はひどすぎるとの非難が沸き起こった。この非難に対して最高裁は「裁判を受ける権利を損なうおそれがある」と異例の注意を促したのだ。世の中理屈だけでは上手くゆかない。この事件がどうなったかは憶えていないが、我々に難しい問題を突きつけたことは今でも鮮明に憶えている。

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